カンボジアでの新型コロナウイルスのワクチン接種情報まとめ【2021】

カンボジアでの新型コロナウイルスのワクチン接種情報まとめ【2021】

2021年4月14日、カンボジア正月3連休初日の夜に発表された首都プノンペンのロックダウン。翌日15日午前0時より都市封鎖が迅速に開始され、本記事執筆時点の5月2日でも厳格なロックダウン実施措置が継続されています。

昨2020年から始まった全世界的なパンデミック発生以降にも、カンボジアにおける新型コロナウイルス感染事例は非常に少なく、感染拡大の封じ込めに成功した”コロナ戦勝国”とも言える状態が長らく続いてきました。

しかしながら、2021年2月プノンペンでの「2月20日コミュニティ感染事案」発生を皮切りに、カンボジア全国に市中感染が強い勢いで拡がり続けています

無責任の連鎖:検疫脱走者クロニクル(Khmer Times記事・非公式和訳)

その一方で、同じく2021年2月からカンボジア国内でも新型コロナウイルスのワクチン接種が本格的に開始されました。いまでは医療従事者や公務員らだけでなく、一般のカンボジア人の方々にもワクチン接種の波が拡がっています。

ワクチン接種は、新型コロナウイルス感染拡大の悪夢からカンボジアを救う一手となるのでしょうか

いよいよ身近な存在になったカンボジアでのワクチン接種

ある統計によると、カンボジアでの新型コロナウイルスのワクチン接種が開始された2021年2月から4月末までに、1回以上のワクチン接種を受けた人数は約134万人(人口の約8.1%)、2回のワクチン接種を完了した人数は約94.5万人(人口の約5.7%)とのことです。

また現在の首都ロックダウンにも関わらず、2回のワクチン接種を完了した人数はロックダウンが開始された4月15日時点の約28.5万人から3.3倍以上に急激に増えていることから、ロックダウン状況下においてもカンボジアでのワクチン接種の取り組みが積極的に進められていることがわかります。

それでは実際にカンボジアで接種可能な新型コロナウイルスのワクチンについての情報を見ていきましょう。

シノファーム製、シノバック製(いずれも中国)不活化ワクチン

現在、カンボジア国内で最も一般的に接種されているのは、中国シノファーム製、中国シノバック製の不活化ワクチンです。

世界中で「ワクチン外交」を積極的に展開している中国は、これまで大量の中国製ワクチンをカンボジアに寄付し続けています。

中国シノファーム製、中国シノバック製の新型コロナウイルスのワクチンはいずれも不活化ワクチンと呼ばれる種類のもので、以下の特徴を持っています。

不活化ワクチンは、薬剤処理をして、感染・発症する能力を失わせたウイルスを投与する方法。 ウイルスに感染性が無くても、ウイルス自体を投与することで免疫システムにウイルスの構造を記憶させることができるのだ。弱毒化ワクチンに比べ副反応が少ないと考えられている一方で、免疫が維持される期間は比較的短く、期間を空けて複数回接種しなければならない場合もある

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一時は、中国製ワクチンの効果や安全性に対して懐疑的な見方をする地元カンボジアの人々の意見も聞かれることが少なくありませんでしたが、カンボジア政府のプロパガンダや「2月20日コミュニティ感染事案」発生以降に市中感染拡大への恐怖が身近な存在になったことから、そうした声は次第に小さくなっていきました。

アストラゼネカ製(イギリス)ウイルスベクターワクチン

イギリスの製薬会社アストラゼネカとオックスフォード大学が開発し、インド最大のワクチン生産会社セルム・ インスティテュートが生産した別名「COVISHIELD(コビシールド)」と呼ばれるウイルスベクターワクチンです。

ウイルスベクターワクチンとは、以下の特徴を持つワクチンです。

ウイルスベクターワクチンは、無害なウイルス(アデノウイルスやセンダイウイルス)を新型コロナウイルスの遺伝子を運ぶ「運び屋(ベクター)」として利用する手法。ウイルスとともに体内に運ばれた遺伝子からコロナウイルスのタンパク質が作られ、免疫が獲得されることになる。 実際のウイルス感染に近い状態を再現するので、効果は高いと期待されている。ただし、運び屋であるウイルス自体が免疫によって排除される懸念がある

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カンボジアのフン・セン首相がこれまで2度の接種を完了したのはこのタイプのワクチンです。当初、フン・セン首相は中国製ワクチン接種の意向を発表していましたが、中国製ワクチン接種の対象上限を「59歳まで」とする発表を受け、自身にはアストラゼネカ製ワクチン接種を選択しました

カンボジアでは60歳以上の高齢者を中心に、この種類のワクチン接種が進められています。

カンボジアでは外国人(日本人)もワクチン接種可能に

2021年2月以降、新型コロナウイルスのワクチン接種の動きがカンボジア国内各地で加速していく一方、カンボジア保険当局は、カンボジアで暮らす外国人にも無料でワクチン接種を提供する旨を発表しました

さらに2021年4月には、より具体的な指針として次の内容が発表されています。

4月8日、COVID-19対応閣僚会議から、カンボジアに居住または就労する外国人のワクチン接種に関する新たなアナウンスメントが発出されましたので、お知らせします。 4月8日付アナウンスメントの概要は、以下のとおりです。

  1. Eビザ及び労働許可の両方を所持している者 ・接種リスト登録担当官庁:職業労働訓練省 ・接種登録に必要な書類:有効なパスポート、有効なビザ、有効な労働許可証 ・接種の時期:同じ職場で勤務するカンボジア人と同じ時期
  2. Kビザ所持者、カンボジア人の配偶者、リタイアメントビザ所持者等、上記1.に含まれない合法的な長期滞在者 ・接種リスト登録担当官庁:都、州、市レベルの行政機関 ・接種登録に必要な書類:有効なパスポート、有効なビザ ・接種の時期:居住する地区のカンボジア人と同じ時期

在カンボジア日本国大使館 – 新型コロナウイルスワクチン接種に関するお知らせ(第3報)

地域や業界ごとに進行するワクチン接種の受付状況

その一方で、地域ごとの行政機関や、業界ごとにもワクチン接種加速の取り組みが進められています。

カンボジアでのワクチン接種を希望する方は、お住まいの地域や居住施設、お勤め先でのワクチン接種に関する最新情報を確認しながら、必要な手続きを確実に進めていけるようにしましょう。

カンボジアでのワクチン接種について注意しておきたいこと

このようにして、新型コロナウイルス感染拡大防止、そして私たちの生活を平常化させるための糸口として、非常に強い期待とともにカンボジア国内でのワクチン接種が取り組まれ続けています。

日本人を含めた外国人にもワクチン接種の無償提供が進められている中、この国でのワクチン接種を希望するカンボジア在住日本人の方々の声も多く聞かれるようになりました。

カンボジアでのワクチン接種を希望する方にも、反対にそれをここでは希望しない方にとっても、しっかりと情報を把握しながら事前に注意しておきたいことについて、次にまとめてみました。

どのワクチンも日本国内では未承認(2021年5月2日現在)

現在カンボジア国内で接種が進められているワクチンは、いずれも日本政府当局から薬事承認されていない種類のものです(2021年5月2日現在)。

日本国内での承認がされていないということは、日本人にとってのワクチン接種の有効性および安全性が十分な検証されていない状態であることを意味します

その一方で、日本国内での初承認がされたファイザー(アメリカ)製の新型コロナウイルスワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンと呼ばれる世界的にも非常に新しい技術で開発されたワクチンです

副反応などの健康被害が生じた際の補償がないことに注意

日本に住む方が日本国内で新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける場合には、万が一の副反応などの健康被害が発生した際には「予防接種健康被害救済制度」による手厚い補償が約束されています

その一方で、カンボジア国内で新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた結果によって生じた健康被害については、残念ながらカンボジア政府からは一切の補償が用意されていません

昨2020年の全世界的な感染流行(パンデミック)を受けて急スピードで開発された新型コロナウイルスのワクチンには、有効性だけでなく短期的・長期的な安全性についても未知の部分が多く残されていることを忘れてはいけません。

ロックダウン圏内「レッドゾーン」では強制ワクチン接種の動きも

前述の2点を含めた諸々の懸念から、ワクチン接種には慎重な姿勢を持つ方も少なくありません。

カンボジア国内でもワクチン接種は強制や義務ではなくあくまで個人の判断で希望されるべきもののはず……ですが、現在のロックダウン実施措置の中、つい先日には、”深刻な市中感染拡大が危惧される地域”としてプノンペン都から「レッドゾーン」として指定されたエリアの全住民(外国人含む)を対象とした強制ワクチン接種の計画が報道されました

そうした動きを受けて、カンボジア日本人会からは在住日本人に対して次の情報配信がなされています。

なお一部地域では、ワクチン接種が強制であり、且つそれには外国人も含まれるとの解釈から、行政が外国人の接種リストを作っているとの情報もあります。接種を希望していないのにもかかわらず、強制的な接種を指導された場合には、邦人保護事案として、大使館にご連絡ください

カンボジア日本人会 – レッドゾーンにおける新型コロナワクチン接種情報

現在、レッドゾーンでは外出も終日禁止されながらの難しい状態が継続されていますが、レッドゾーン圏内に住みながらワクチン接種を希望しない方は、常に最新情報を確認しながら細心の注意を払ってください。

まとめ

カンボジア在住日本人の方々の中にも、ここカンボジアでのワクチン接種を希望し、すでに接種を済ませた方も少しずつ増えてきている様子です。

ワクチン接種をすることに決めた方も、いまはまだしないと考えている方も、どちらの方にとっても、ワクチン自体の情報がまだまだ不確かな現在、できるだけ多くの情報を集めながら自らの基準で判断していくことが何よりも大切です

同様に、誰かの意見を盲目的に信じてしまうことや、専門家の見解や本に書かれていることだからとその権威にだけ依存してしまうのも、それがあなたにとっての正しい判断とは言えません。

本記事でまとめた情報も、世の中にあふれる情報の単なる一角に過ぎないものですが、ここカンボジアで暮らすことを選んだみなさまにとって少しでも参考になれば幸いです。

これからもできるだけ多くの情報を収集しながら、未来に向けた選択の一歩としてみてください。

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