前回の記事では、カンボジア銀行口座開設ガイド【前編】として、銀行口座開設の目的別にどのような点を重視しながら銀行選びをしたらよいかを考えてみました。
今回はそれを踏まえて、具体的にどの銀行を選んでいくべきか、注意すべき点や銀行ごとの特徴を照らし合わせながら比較検討していきたいと思います。
銀行選びの際に見るべきポイント
さて、カンボジアでの銀行選びの際には、どのような点に気をつけながらチェックしていけばよいでしょうか。
日本人がカンボジアで銀行口座を開くときに注意すべき点を確認していきましょう。
預金金利の高さ
高金利の定期預金を米ドル建てで運用できることが一部で有名なカンボジア。
実際に自分の資金を預けるときにも、同じだけ預けておくことを考えたら、できるだけ多くお金を増やしてもらえるところを選びたいものですよね。
2021年3月現在、日本国内メガバンクの定期預金は年利0.002%ですが、カンボジア国内主要銀行の定期預金は1年ものでも概ね年利4%以上、つまり日本国内での定期預金2,000年分以上の利息をカンボジアであればたったの12ヶ月で受け取ることができることを意味します。
使い勝手の良さ、安全性
しかし、金利の高さだけで預金先を選んでしまって大丈夫でしょうか。もしかすると、あとから予期せぬ困った事態を迎えてしまうかもしれません。
スマートフォン向けアプリを介したモバイルバンキングは、いまやカンボジアでも当たり前の存在となりましたが、それを利用して実行できる機能やサービス内容、またシステム面の安全性は、銀行によってまちまちです。
さらに別な観点として、定期預金金利の高さが目立つ預金受託マイクロファイナンス機関(MDI)や商業銀行としてのライセンスを取得して間もない金融機関では、いくら高金利であったとしても、日本や諸外国への国際送金をすることができず送金に困ってしまう……、ということも起こり得ます。
サービスの使い勝手やその範囲は(利用者増加や環境の変化にしたがって)今後も拡充が期待されますが、「備えあれば憂いなし」。あとで余計な心配をすることのないように銀行選びの段階でしっかりと確認をしておきたいところです。
日本語対応、ジャパンデスクの有無
ここカンボジアには、日本人スタッフ常駐または日本人スタッフとの面会を予約可能な「ジャパンデスク」を持つ銀行がいくつか存在します。在住日本人の数がわずか4,216人(2020年度の外務省海外在留邦人数調査統計より)のカンボジアにおいて、その充実したサービス体制は本当に驚くべきことです。
銀行窓口には、どの都市でも英語対応できるスタッフがスタンバイしていることがほとんどですが、やはり大切なお金の話ですので日本語で詳しく確認しておきたくなるのが心情です。日本人スタッフ常駐の銀行窓口であれば、困ったときにも迅速な対応が期待できることでしょう。
カンボジア在住日本人向け、おすすめ銀行3選

上記のポイントを踏まえて、カンボジア生活におすすめの銀行を3つピックアップしてみました。
カンボジアでの銀行サービスは日本のように画一的ではなく、それぞれの銀行の方針の違いによって異なる持ち味があります。ここに挙げている以外の銀行にも便利な特長を見つける楽しみがありますので、みなさまもぜひチェックしてみてください。
PPCBank(プノンペン商業銀行)
カンボジア在住日本人や日本人投資家にとって非常に有名なカンボジアの銀行といえば、「プノンペン商業銀行」という和名でも広く知られているPPCBankがまず挙げられるのではないでしょうか。日本人スタッフ常駐のPPCBankジャパンデスクは2013年から運営が継続されており、日本人向けサービスに長らく定評がある銀行です。日本語ウェブサイトも用意されているので安心して情報がチェックできます。
PPCBankジャパンデスクは、2018年2月に現在のPPCBankオルセー支店2階に移転しました。以前ジャパンデスク窓口のあったプノンペンタワー支店は営業を終了しています。
かつてはSBIホールディングス資本で立ち上げられた経緯を持つ商業銀行でしたが、2016年の株主変更以来、全北銀行(韓国)を筆頭株主としたJBフィナンシャルグループを母体とする体制に変更となっています。株主変更以降もジャパンデスクの運営体制は強化されている様子が伺え、インターネットバンキングやカード決済といった銀行サービス拡充のスピード感にも好感が持てる、日本人にとって安心して利用できる代表的な銀行のひとつです。
【PPCBank】銀行サービス概要(2021年3月31日現在) | |
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ジャパンデスク | あり |
日本人スタッフ | 常駐(ジャパンデスク窓口) |
日本語ウェブサイト | あり |
普通預金金利 | 米ドル:年利 0.60% / カンボジア・リエル:年利 1.25% |
定期預金金利(12か月) | 米ドル:年利 4.75% / カンボジア・リエル:年利 5.50% |
モバイル決済 | あり(モバイルペイ) |
カードサービス | VISAデビットカード / VISAクレジットカード |
インターネットバンキング | あり(モバイルバンキングは日本語対応) |
Sathapana Bank(サタパナ銀行)
日本のバチンコチェーン最大手のマルハンが、カンボジアをはじめとする東南アジアで銀行業を営んでいることは意外と有名な事実です。2016年、マルハンジャパン銀行と当時のカンボジア国内マイクロファイナンス大手のサタパナ社が経営統合し、「サタパナ銀行」として本格的な商業銀行業務を運営しています。銀行が親会社でない点に抵抗さえなければ、預金金利も高く便利なサービスを数多く展開している銀行として魅力的な選択肢です。
マイクロファイナンス業務をルーツに持つ商業銀行として他銀行を圧倒する高金利が最大の特長でしたが、この数年の経営改革によって、インターネットバンキングや決済サービスをはじめとしたリテール業務にも大きな進化を見せています。サタパナ銀行ジャパンデスクでは事前連絡による予約をしておくことで日本語で適切な相談を受けられることも大きなポイントです。
サタパナ銀行ジャパンデスクは、2021年1月に完成したサタパナ銀行新社屋「サタパナタワー」に移転しました。
【Sathapana Bank】銀行サービス概要(2021年3月31日現在) | |
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ジャパンデスク | あり |
日本人スタッフ | 事前予約推奨 |
日本語ウェブサイト | なし |
普通預金金利 | 米ドル:年利 0.60% / カンボジア・リエル:年利 0.75% |
定期預金金利(12か月) | 米ドル:年利 5.50% / カンボジア・リエル:年利 7.00% |
モバイル決済 | あり(サタパナQRペイ) |
カードサービス | VISAデビットカード / VISAクレジットカード |
インターネットバンキング | あり |
Advanced Bank of Asia(ABA銀行)
ここ数年でカンボジア国内で最も勢いある商業銀行といえば、「ABA(エービーエー)銀行」をおいて他にないでしょう。現在のABA銀行はカナダ資本として、カナダ・ナショナル銀行(National Bank of Canada、カナダ中央銀行Bank of Canadaとは無関係)を親会社に持つ銀行となっています。その以前はカザフスタンの大富豪に所有されたどちらかといえば目立たない銀行のひとつでしたが、現在の株主体制に以降した途端に大成長を遂げました。
ABA銀行にはジャパンデスクはなく、日本語サービスは今後も期待できる状況にはありませんが、なによりもその強みはカンボジア国内における決済サービスの汎用性です。モバイルバンキングの使い勝手の良さから地元のカンボジア人を中心にユーザーが急増し、いまではオンライン送金といえばABAというほどカンボジア国内の消費者・販売店の双方から幅広く支持されています。
決済サービスやATMネットワークが拡充される一方、預金金利は決して高くないためにお金を貯めたい人には向いていません。しかし、「おサイフ代わり」のABA口座をひとつ持っていれば日々のお買い物やオンラインショッピングにも便利に役立つことでしょう。
【ABA】銀行サービス概要(2021年3月31日現在) | |
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ジャパンデスク | なし |
日本人スタッフ | なし |
日本語ウェブサイト | なし |
普通預金金利 | 米ドル:年利 0.05% / カンボジア・リエル:年利 0.25% |
定期預金金利(12か月) | 米ドル:年利 3.50% / カンボジア・リエル:年利 4.00% |
モバイル決済 | あり(ABAペイ) |
カードサービス | VISA / MasterCard / UnionPay(デビットカード、クレジットカード) |
インターネットバンキング | あり |
まとめ
2021年現在、カンボジアの銀行・金融業界にはすでに50以上の商業銀行が存在する上、さらに大小のマイクロファイナンス機関も同じ市場でひしめきあう「大激戦区」ともいえる状況になっています。
激しい競争のためか、消費者であるわたしたちにとってはありがたいほどに充実したサービスが次々と発表される、とても刺激的な環境であるといえます。
たとえば前述の3つの銀行では、平日だけでなく土曜日や日曜日・祝日にも通常営業しているような銀行窓口も増えています。また、午前8時から午後8時まで長時間営業しているような銀行窓口は日本では考えられませんが、ここカンボジアではそうした長時間営業の銀行窓口も当たり前のものになりつつあります。
銀行というと「よくわからない」、「どこも同じなんじゃないか」と知らず知らずに敬遠してしまい苦手意識でよく調べることもなく選んでしまいがちですが、ここカンボジアの銀行はどれも違った特色があり魅力的です。できるだけ多くの銀行を比較・検討してみることをおすすめします。複数の銀行に口座開設して実際に利用してみながら、あなたにとって最も使いやすい銀行を選んでみてください。
本記事が、あなたにとってのカンボジアでの銀行選びに少しでも役に立つことを祈っています。