KHQR普及がもたらしたカンボジア国内決済のキャッシュレス化

KHQR普及がもたらしたカンボジア国内決済のキャッシュレス化

近年めざましい変化を遂げているのが、カンボジア国内のキャッシュレス決済です。

カード決済も過去に比べて大幅に普及しましたが、いまやカンボジア国内で暮らす誰もが使用しているといっても過言でないのが『KHQR(ケーエイチキューアール)』と呼ばれる、スマートフォンアプリでのQRコード読み取りを利用したキャッシュレス決済です。

かんたん便利なKHQRで、お財布いらずのカンボジア生活をお楽しみください!

国内の銀行・決済サービスを網羅した統一規格『KHQR』

KHQRとはそもそもどんな決済サービスで、どのような特長があるものでしょうか。

要点をいくつかのキーワードとともにまとめてみることにしましょう。

KHQRキャッシュレス決済の特長

KHQR network
KHQR加盟銀行ネットワークはカンボジア全国を網羅している

カンボジア中央銀行が開発したカンボジア国内QR決済の統一規格:国内主要銀行および決済サービスがKHQRネットワークに参画、カンボジア全国での相互決済が可能

キャッシュレス決済:QRコード読み取りを通じた手軽な操作のスマホ決済で紙幣の受け渡しやお釣りも不要に

手数料無料:KHQRネットワーク内であれば相互の銀行や決済サービスを問わず手数料無料

お財布いらず、紙幣いらず、手数料無料のキャッシュレス決済が、とりわけ感染症対策の意識の高まりとともに安全で便利な支払い方法として広く受け入れられ、大幅な普及につながっていきました。

2022年7月正式運用開始からの急速な普及へ

KHQRの技術仕様サンプルは2020年にカンボジア中央銀行から発表され、2021年後半には主要な銀行が試験的に導入を開始していましたが、その後、KHQR正式運用開始が発表されたのは2022年7月4日のことでした。

つまり、わずか一年足らずのこの短い期間に、紙幣やカードに頼らないQRコード決済がカンボジア全国で広く普及したこととなります。

若年層の多いカンボジアではスマートフォン利用が一般に広く普及していたこと、また、スマートフォン操作によるKHQR対応銀行アプリ自体の簡便性が、KHQR決済の普及を強く下支えしたものと考えられています。

必要なものはカンボジア国内銀行口座とスマートフォンだけ

2023年8月現在、カンボジア国内のほぼすべての主要な銀行や決済サービスがKHQR決済の取引に対応しています。

KHQR決済はいたるところで利用ができ、銀行口座とスマートフォン(KHQR決済を操作できる銀行アプリ)さえあれば、お財布なしで外に出てしまったとしても困らずに生活できてしまうほどになりました。

スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ミニマートはもちろん、レストラン、コーヒーショップといった飲食店、病院や薬局、ヘアサロンやネイルサロンといった美容サロン、衣料品店、青果店、お花屋さん、ケーキ屋さん、パン屋さん、ガソリンスタンドといったお店でも、はたまたトゥクトゥクやタクシーのドライバーさん個人へのお支払いでも、さらにはローカル市場の個人商店でも、どんなところでもKHQR決済でのお支払いができてしまいます。

KHQRのスタンドやステッカーが目印

KHQR stand
KHQRスタンドの一例(実際の使用はできません)

KHQR決済ができるお店のレジや店頭にはKHQRのスタンドやステッカーが置かれています。

銀行アプリのKHQR決済機能を使用してQRコードを読み取るだけで、現金いらずのKHQR決済としてのお支払いができます。

KHQR決済をしたい時の合言葉「エービ・エイ」

KHQRキャッシュレス決済をしたいのに、KHQRスタンドやステッカーが見あたらないときにはどうしたらよいでしょうか。

そんなときは、店員さんに「エービ・エイ」と声かけてみましょう

きっと店員さんはすぐにKHQRを持ってきてくれるはずです。KHQRスタンドやステッカーがないお店や、タクシードライバーさんの場合には、スマートフォン画面からKHQRを見せてくれることでしょう。

スマートフォン画面に表示されたQRコードの読み取りでもKHQR決済は可能です。

「エービ・エイ」とは、カンボジア国内の主要銀行のひとつ、ABA銀行のことを指す言葉です

KHQRが普及する数年前から、ABA銀行は積極的にQRコード決済を促進していました。ABA銀行独自のQRコード決済(ABAペイ)がプノンペンで暮らす若者たちを中心に広く認知されていたことから、ここカンボジアでは、ABA銀行以外のKHQRも含めたQRコード決済行為そのものが「エービ・エイ」と呼ばれるようになりました

まとめ

2023年7月29日、チア・セレイ氏が異例の42歳の若さで、さらに女性として初めてとなるカンボジア中央銀行の新総裁への就任が発表されました。カンボジア中央銀行総裁としての役職は、カンボジア政府での上級大臣格と同等のものとして見做されています。

チア・セレイ氏こそが、カンボジアがコロナ禍の危機に瀕していたその時期においてもカンボジア中央銀行デジタル決済プラットフォーム「バコン」および「KHQR」普及の促進に強くコミットし続けてきた人物であり、今回のカンボジア中央銀行総裁としての就任は、銀行業務や決済のデジタル化に果たされた実績が正当に評価された結果であるともいえます。

KHQRは、カンボジアの人々にとって便利で安全な決済ソリューションを提供する革新的な決済システムであり、さらなる次のフェーズとしてデジタル決済のクロスボーダー化(多国間の国際決済)の取り組みが進められています。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)の取り組みが大国で慎重に進められる中、蛙飛び(リープフロッグ)で頭ひとつ上に飛び出したカンボジアは、これから世界中の国々が迎えていく決済市場の変遷の中で非常におもしろい存在だといえるでしょう。

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