世界初の中央銀行デジタル通貨? 「バコン」が正式運用開始

世界初の中央銀行デジタル通貨? 「バコン」が正式運用開始

水祭り連休を目の前にした2020年10月28日(水)、カンボジア国立銀行(NBC)は「バコン(Bakong)」の正式運用開始を発表しました

2019年7月の試験運用開始以降、2020年3月からの正式運用開始が予定されていましたが、コロナ禍の影響もあり、この時期の正式リリースとなった模様です。

中央銀行デジタル通貨の”実用例”

バコン正式運用開始のニュースは、カンボジア国内のみならず、先進国をはじめとする世界各国からの注目を集めています

日本国内のNHKニュースでも、話題として取り上げられました。

世界に先駆け運用開始。日本では?

NHKニュース:おはBiz「デジタル通貨 カンボジアの挑戦」

中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは

日本を含むカンボジア国外での各報道によると、どうやらバコンは世界初の中央銀行デジタル通貨として認識され、注目されている様子です。

”中央銀行デジタル通貨”とは、一体なんのことなのでしょうか。教えて!にちぎん!

一般に「中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)」とは、次の3つを満たすものであると言われています。(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されること。

日本銀行Webサイト:教えて!にちぎん「中央銀行デジタル通貨とは何ですか?」

日本国の中央銀行である日本銀行のWebサイトでは上記のように回答されていました。

まとめると、「中央銀行主導でデジタル化した法定通貨」ということでしょうか。なんだか、すごそうですね、カンボジア!

中央銀行デジタル通貨をカンボジアは否定

ただその一方で、バコンに関するこんな情報も見つけました。

バコンのパイロット運用が進行していた2020年1月、自由民主党所属の衆議院議員、山本幸三氏によるカンボジア出張報告の中では、次のような記述がされています。

中銀で個人の口座を管理しないため、我々はこのプロジェクトを CBDC(中銀デジタル通貨)とは呼ばない。CBDC というと種々の議論を呼び、国内法の改正も必要となるので、あくまで基幹的(バックボーン)決済システムだと考えている。

衆議院議員 山本幸三「カンボジア中銀デジタル通貨に関する出張報告」

Q:改めてバコンとは何か?

A:決済システムである。いわば紙幣をデジタル化するもので、以下の 3 点に期待できる。

① 金融包摂。 ② 透明性の確保。例えば税金を電子的に支払うようにできれば、行政の透明性が向上。 ③ キャッシュレスエコノミーの推進。

衆議院議員 山本幸三「カンボジア中銀デジタル通貨に関する出張報告」

さらにカンボジア国内の報道では、「バコンは中央銀行デジタル通貨(CBDC)ではない」とカンボジア国立銀行が明確にそれを否定する内容までも報じられています。

最新のブロックチェーン技術を応用したデジタル決済システムとして誕生したバコンですが、ビットコインに代表される暗号通貨のように投機的なものではない旨、あくまでカンボジア国内決済のデジタル化を補助するシステムであるとして、カンボジア国立銀行からは一貫した説明が行なわれている模様です。

カンボジア国内におけるバコン

カンボジア国立銀行主導のデジタル決済システムとして正式運用開始が発表されたばかりのバコン。

現在のところ、市中ではバコン決済が可能な販売店舗を見かけることも少なく、実際の市民レベルでの普及や認知度の向上はまだまだこれからの状況といえそうです。

2020年12月現在の参加金融機関(18社)

2020年12月現在、以下の18金融機関とのシステム接続を通じた運用が行なわれています。

現時点の参加金融機関の状況は、銀行の資産規模に関わらず、先進的なシステム面の取り組みに強い金融機関を優先して進められている様子が伺えます。

これらの金融機関窓口ではバコンと現金との入出金を取引できる他、バコンから参加金融機関の預金口座宛に直接送金もできるようになっています

まとめ

そもそも「バコン(Bakong)」とは、アンコール王朝初期の古代寺院であり、世界遺産アンコール・ワットの原型としても有名なクメール遺跡のその名称です。

世界遺産アンコール・ワットからやや離れたロケーション(シェムリアップ市街から東方向に約15km)のためか、すべての旅行者が訪れるような知名度にはなっていませんが、アンコール・ワット建造よりも古く9世紀末に建てられた寺院でありながらも、21世紀のいまなお荘厳な美しさを誇る遺跡です。

バコン寺院遺跡(ロリュオス遺跡群)

中央銀行デジタル通貨の実用開始にむけた取り組みが世界各地で進められている現在、日本国内でもこれまで以上に具体的な議論がされるようになりました。

ビットコインら暗号通貨の台頭、そしてFacebook社による独自の暗号通貨「ディエム(旧称:リブラ)」の実用開始準備までもが噂される現在、通貨や決済のデジタル化は今後も間違いなく進化が期待される分野といえるでしょう。

そうした中で、世界各国に先駆けて実用化されることになったカンボジア発の「バコン」が”世界中の中央銀行デジタル通貨の原型となる”、そんなワクワクするような可能性もおおいに期待できそうです。

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